今日から始める心を守る7つの方法

あなただけじゃない!IT現場の構造が生む心の疲弊
もし今、心身の不調を感じているなら。
もし「自分が弱いから」と自分を責めているなら。
知ってほしいことがあります。
多くのエンジニアさんと対話してきて思うことは、メンタル不調に繋がりやすい業界構造だということ。
実際に、厚生労働省の令和5年労働安全衛生調査によると、情報通信業でメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいる事業所の割合は32.4%。これは全産業中トップで、全産業平均の約2.8倍となっています。
つまり、IT業界で働く人の3人に1人近くが所属する職場で、メンタル不調による休職者が発生しているのです。
IT業界には、納期や見積りにあわせた長時間労働、不明確な要件、頻繁な仕様変更など、あなた一人の対応ではどうにもできない、不可抗力で心身を消耗させる構造的な問題が根深く存在しています。
あなただけが特別に弱いわけではありません。誰もが陥る可能性のある、業界特有の環境が存在しているということです。
かくいう私もエンジニアではないですが、メンタル不調で心療内科に通った過去があります。
今回このブログで一番伝えたいのは、
「今の苦しい状況を変えられる術がある」
「今よりきっとラクになれる」
そんな可能性がちゃんとある、ということです。
あなたの心を軽くできるそんなブログになればと記していきます。
心を守るために認知を変える7つの方法
心が疲弊しているとき、多くの場合「考え方の癖」が心をさらに追い込んでいると感じます。
”絶対にこうだ。”と思い込んでいたことも、認知を変えることで、同じ現実でも心の負担を軽くすることができます。これから紹介する7つの方法は、あなた自身で実践できる「心の守る方法」です。
1. あなたが背負わなくていいものを手放す「課題の分離」を実践
まず紙とペンを用意して、今抱えている悩みや責任をすべて書き出してください。 そして、一つひとつに「これは誰の課題?」と振り分けていきます。一人で抱え込まなくていい課題が見えてくるはずです。
例えば
| 悩み | 本当は誰の課題? |
|---|---|
| 無理な納期 | 経営層・マネージャーの課題 |
| 技術選定の失敗 | プロジェクト責任者の課題 |
| クライアントの無茶な要求 | 営業・マネージャーに相談できる課題 |
| 自分のスキル向上 | あなたの課題(コントロール可能) |
| 自分の健康管理 | あなたの課題(最優先事項) |
紙に書き出し、整理する理由として、「すべての対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされる」と言われています。
知らずに他人の課題を背負い込み、悩みを大きくしてしまっていることがあります。他人の課題まで自分の課題と捉えてしまうと、あなた自身の大きな負担となり、心が疲弊してしまうことに繋がります。
境界線を引くことは、プロフェッショナルとして正当な行動です。
● 「課題の分離」とは”相手を変えようとしないこと”
例えば、上司が理解してくれないことがあったとします。これは上司側の課題であり、 あなたがコントロールできることではないことがわかります。
- 上司が変わってくれること→上司の課題(あなたには変えられない)
- 会社が働きやすくなること→会社の課題(あなたには変えられない)
- あなたが自分を守ること→あなたの課題(あなたにできる)
他人と環境は変えられない。でも、自分の認知と行動は自分で変えることができます。
気持ちが楽になる方を選んでも良いんです。
2. 「承認欲求」から自由になる。誰も理解してくれない環境でも、あなたは大丈夫
IT業界では、特に客先常駐で勤務することが多く、孤独を感じやすい環境があります。 上司に相談しようにも”現場にいない”。 同僚は忙しくて相談できる雰囲気じゃない。守秘義務もあるし…。と。
誰にも認められず、孤独を感じ、自信を失っていませんか?
● 「誰もわかってくれない」という苦しみの正体
「上司にわかってほしい」 「メンバーに伝わってほしい」「会社に評価されたい」
この「〜してほしい」という思いが、実はあなたを縛っています。
私も随分この縛りに悩み続けました。今でも落ち込んでいる時に責めてしまうことがあります。他人の評価で自分の評価をしてしまう癖があるからでした。
でもこんな言葉があります。「他者の期待を満たすために生きてはいけない。他者の承認を求めることは、他者の人生を生きることである」
確かに、他者評価を気にし続けたことで、何も得していない自分がいることに気が付きました。
誰かが評価してくれなくても、自分の価値は変わらない。それでいいじゃないかと思えるようになってきました。
● 「貢献感」は、相手の反応がなくても持てる
「貢献感」というのは、実は相手が認めてくれるかどうかは関係ないと言います。
あなたが「貢献した」と思えれば、それだけで十分。他者からの評価で測るものではないのです。誰も気づかなかったことでもちゃんと貢献できていることがあります。
例えば、
- バグを見つけた→システムの品質に貢献した
- ドキュメントを書いた→すぐ読んでくれる人がいなくても、将来誰かの役に立つ
- 今日も働いた→プロジェクト推進に貢献した
相手の反応を待たず、自分で自分の貢献を認める。 これが、小さな成功体験となり、自己効力感が上がり、心を守ることに繋がります。
3. 自分自身を「勇気づける」結果だけでなくプロセスを認める
自分自身に自信がなくなってきたと感じたら、
“毎日3分の勇気づけワーク“で自信を取り戻していきましょう。
小さなことでも良いんです。寝る前に、その日の「できたこと」を3つ書き出します。
重要なのは、結果ではなく「行動」に注目すること。
NG例(結果重視):
- 「バグを10個直した」
- 「プロジェクトを完成させた」
OK例(プロセス重視):
- 「わからないことを、勇気を出して先輩に質問できた」
- 「集中力が切れそうだったけど、休憩を取って作業を続けられた」
- 「完璧じゃないけど、今日も最後まで諦めずに取り組んだ」
貢献感を感じる問いかけ: 「今日、誰かの役に立てたことは?」
- バグ報告をした→チーム全体の品質向上に貢献
- レビューコメントをした→後輩の成長を支援
- 定時で帰った→過労を防ぎ、翌日も良いパフォーマンスを出せる準備
小さな貢献の積み重ねが、自己受容と勇気を育てます。
4. 技術の追いかけ方を変える!「完璧主義」から「最適主義」へ
IT業界の技術革新は止まりません。でも、すべてを学ぶ必要はありません。
そもそもすべてを習得するなんて、仕事しながらでは到底難しい話。
① 「今必要な技術」にフォーカスする
- 今のプロジェクトで使う技術
- 今後3ヶ月で必要になりそうな技術
やるべきことが、明確になって絞られるだけで心が少し軽くなります。
② 「まずは5分だけ。」「1問だけ。」で良い
大事なのは、続けられる小さな習慣にすること。
電車に乗ったら1問だけ解いてみる。お風呂に入ったら5分だけやってみる。
いつもの生活の中に、そっと勉強を忍び込ませていく感じでOK。
③ 「わからない」をことを強みにする
こんな言葉があります。「重要なことは、何を持って生まれたかではなく、与えられたものをどう使うか」
わからないことは、質問し、学び、成長する絶好の機会であると言います。
もともと 完璧な人間などいません。
不完全な自分を受け入れ、昨日より今日、できたことが1つ増えたことを見付ける。
わからないことをマイナスに受け取らないことも、自己受容の第一歩です。
5. 労働環境を主体的に変える。あなたにはその権利がある
もし、今の環境を少しでも変えたいと思っているなら。ニーズを伝える権利があることを知っておいてください。
【ニーズを伝えるテクニック】
例えば、今の現場の稼働が高い状況が長期的に続いている場合。
① 現状を可視化する
- 労働時間、残業時間を記録
- タスクの量と優先順位を整理
- 物理的に不可能なスケジュールを明示
② 感情ではなく、事実とニーズを伝える。アサーティブ(誠実)な姿勢で。
攻撃的: 「こんな納期無理に決まってるじゃないですか!」
受動的: 「はい…頑張ります…」(心の中で無理だと思っている)
アサーティブ: 「現在のタスク量を考えると、品質を保ったまま納期を守るには、〇〇日必要です。納期を調整するか、機能を減らすか、人員を増やすか、どの選択肢がよろしいでしょうか?」
あなたの健康とプロフェッショナリズムを守ることは、わがままではありません。良い仕事をするための権利であることを忘れないでください。
6. オンとオフを明確に。境界線を引くことも大切
エンジニアは、PC、スマホ、タブレット…気づけばブルーライトに包まれた毎日。
画面を見る時間が増えるほど、目も脳も休む暇がありません。
だからこそ、意識的に“オフ”の時間をつくることが大切だと感じます。
【デジタルデトックス実践法】
① 終業時刻を宣言する
チームに共有:「18時以降は緊急時以外は翌日対応とさせていただきます」
終業後は、誰にとっても大切なプライベートの時間です。
役職がマネージャーでもリーダーでもメンバーでも、その時間を守る権利は平等にあります。
デジタルから距離をとって、しっかり休むことが明日の良い仕事につながります。
② 物理的な境界を作る
しっかりと線引きをし、オンとオフの環境作りをします。
- 仕事専用の場所を決める
- 終業時は仕事道具を視界から片付ける
- 通知をオフにする
③ 終業儀式を作る
気持ちを切り替える方法も決めておきましょう。
- パソコンを閉じる
- 着替える
- 散歩に出る
小さな儀式が、脳に「仕事モード終了」の合図を送ります。
7. それでも辛い場合は専門家の力を借りる。早めの相談は大袈裟ではなく回復を早めること
「メンタルクリニックに行く = 重症」ではありません。 「予防」のために行くことが、賢い選択だと思います。
海外では、心の不調を感じる前にプロへ相談することは、ごく当たり前の“予防行動”です。
歯が痛む前に歯医者へ行きメンテナンスをする。
風邪をひかないように手洗いをするのと同じで、これは自分を大切にする、ひとつの習慣です。
相談できる場所:
- 産業医: 会社が費用負担、守秘義務あり
- EAP(従業員支援プログラム): 多くの企業が導入
- 心療内科・精神科: 早期なら数回の通院で改善も
- カウンセラー: オンラインでも相談可能
初診で伝えるポイント:
- 「いつから」症状が出ているか
- 「どんなとき」につらくなるか
- 「睡眠」「食事」「集中力」の状態
- 「仕事への影響」があるか
メンタル不調は誰にでも起こり得る、ごく自然な現象です。
人間は、身体と同じく、心も負荷に耐えられる限界があります。
そのサインを恥じる必要はありません。
むしろ「休むべき」という身体からの大切なメッセージ。
適切にケアできる人こそ、賢く前に進めると思います。
今日から始める「小さな一歩」チェックリスト
□ 今抱えている悩みを紙に書き出し、「課題の分離」をしてみる
□ 今日できたこと(プロセス)を3つ書き出す
□ チームメンバーに感謝や挨拶のメッセージを送る
□ 終業時刻を決めて宣言する
□ 信頼できる人に現状を話してみる
□ 産業医やカウンセラーの連絡先を調べる
□ 15分の散歩やストレッチをする
一度にすべてやる必要はありません。
今日、一つだけ選んで、負担の無い所からやってみてください。
最後に──あなたには回復する力がある
仕事をしていると時には困難なことが立ちはだかることがあります。 でも、あなたは一人じゃありません。
情報通信業では、 約3割の人が、同じ道を通ってきています。そして、その多くが回復し、また社会で活躍しています。
先が見えずに不安や焦りを感じる時期があるかもしれません。
でも、人は本来「回復する力」をちゃんと持っています。時間をかけながらで良い。その力は再び必ずあなたを回復させます。
最後にアドラーの厳しくも温かい言葉を贈ります。
「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生は、きわめてシンプルである」
今、あなたが複雑にしているものの多くは、「他人の課題」かもしれません。 手放していいものを手放し、自分を勇気づけ、繋がりを育む。
それだけで、人生は驚くほどシンプルになるかもしれません。
私たちは今日まで、本当によく頑張ってきた。
これからは、自分を守りながら、持続可能な働き方を選んでも良いことを知っておいてください。
あなたには、健康に働く権利がある。
あなたには、休む権利がある。
あなたには、自分のために幸せになる権利がある。
今日から、小さな一歩を踏み出せるようなら、無理のない範囲で。
今すぐ相談できる窓口
- こころの耳(厚生労働省): https://kokoro.mhlw.go.jp/
- メール相談、電話相談、SNS相談あり
- よりそいホットライン: 0120-279-338(24時間無料)
- いのちの電話: 0120-783-556
- 働く人の「こころの耳メール相談」: https://kokoro.mhlw.go.jp/mail-soudan/
