SESで「給与50万円」は高い?安い?

最近、若手から「SESで給与50万円って高いんですか?安いんですか?」と聞かれることがありました。
まず前提を整理します。
• 給与:エンジニアが会社から毎月もらうお金(=自分の取り分)
• 客先単価:会社が顧客から受け取るお金(=案件ごとの売上)
SESでは、この「客先単価」から会社の取り分を差し引いた残りが「給与の原資」になります。
この記事では、この2つを明確に区別して話していきます。
1. 給与は「客先単価」で決まる
SESの給与はシンプルに客先単価 − 会社の取り分 = 給与原資。
• 客先単価80万円 → 給与45万円前後
• 客先単価90万円 → 給与50万円前後
客先単価80万円は最低条件、90〜100万円でようやく給与50万円が見えてくる。
商流にもよりますが、これが中小SESの現実ラインです。
▼経験レンジ別 単価帯と求められるスキル
経験レンジ | 想定単価帯(月額) | 基本的に求められるスキル/役割 | +αスキルがある場合の跳ね幅 |
---|---|---|---|
テスター 未経験~1年 | 30〜45万円 | ・プログラミング基礎(Java, PHP, JS, Python 等)・単体テスト、バグ修正・Git運用の基礎、報連相 | +資格(基本情報・AWS CLFなど):+2〜5万 |
PG初級 1年~3年 | 40〜55万円 | ・中規模機能の実装を自走・結合テスト、設計補助・FW/ORM、DB設計基礎・セキュリティ/パフォーマンス初歩 | +クラウド実務経験(EC2, Lambdaなど):+5〜10万 |
PG~SE 3年~5年 | 55〜70万円 | ・基本〜詳細設計・見積/工数見通し・クラウド活用(EC2, S3, IAMなど)・CI/CDパイプライン基礎構築・後輩指導 | +モダン環境経験(Docker, k8s, Terraform):+10〜15万 |
SE~PL 5年~10年 | 65〜100万円 | ・要件定義/基本設計の主担当・アーキ構成設計、性能/可用性/セキュリティ設計・クラウド最適化、運用設計・複数人の技術リード、レビュー責任 | +セキュリティ・ゼロトラスト、AI/データ基盤、FinTech等のドメイン知識:+15〜30万 |
PM/アーキクラス 10年~ | 90〜150万円(上は200万円超も) | ・要件定義/全体アーキテクチャ設計・大規模PJの統括、リスク管理・ステークホルダー調整、経営層報告・品質保証、WBS/予実管理・技術選定と意思決定 | +グローバルPJ経験、AI/クラウド認定資格(AWS SA Pro, TOGAF等)、業界横断でのPM実績:+20〜50万 |
2. 「会社の取り分=丸ごと利益」ではない
例:客先単価90万円、給与50万円の場合、会社取り分は40万円。
「会社が40万も抜いている」と思うかもしれませんが、実際にはこう分解されます。
• 社会保険料(会社負担分):約7万円
• 営業費用・紹介料:5〜10万円
• 管理部門コスト(経理・人事・労務):3〜5万円
• 採用費・研修費:2〜3万円
• 待機リスクのプール:2〜3万円
• オフィス費用:1〜2万円
• グループウェア・SaaS利用料:0.5〜1万円
• 福利厚生(飲み会・資格補助など):1〜2万円
• 税金(消費税・法人税など):5〜7万円
• 会社の純利益:5〜7万円
つまり、取り分40万円のうち、実際に会社に残る純利益はわずか数万円。
「会社がぼろ儲けしている」とは全く言えないのが現実です。
3. 給与50万円のカギは「リーダー経験」
「じゃあ客先単価100万の案件に入ればいいのでは?」と思う人もいるでしょう。
でも現実には、技術者一人だけで100万はレアケースです。
• プロジェクトリーダー(PL)としてチームをまとめる
• 顧客折衝を担う
• 品質や納期の責任を負う
こうした「責任+マネジメント」を背負ってはじめて、顧客は100万を払います。
つまり中小SESで給与50万円に届く人は、リーダー経験を積んでいる人がほとんどなのです。
4. 技術だけでは届かない理由
もちろん技術力を磨くことは大事です。
でも給与50万円を安定して得るには、技術に加えてこんな力が必要になります。
• チームをまとめる力
• 顧客から信頼を得る力
• 問題が起きたときに矢面に立つ覚悟
要するに、「自分の分だけ」ではなく「チーム全体の価値」を背負えるかどうか。
これが給与50万円ラインの現実条件です。
▼若手が単価100万を目指すためのロードマップについては以下もチェックしてみてください!

5. 若手が今からできること
- 市場単価を知る:自分の客先単価を把握する
- 高単価スキルを磨く:クラウド、セキュリティ、モダン開発
- リーダー補佐を経験する:小さなタスク管理や顧客報告から始める
- 「替えが効かない存在」を意識する
技術だけでなく「リーダーシップの種」を早めに育てることで、給与50万円がぐっと現実的になります。
まとめ
「SESで給与50万円は高い?安い?」と聞かれたら、僕はこう答えます。
- 客先単価80万円では届かない。客先単価90〜100万円でようやく見えてくる
- リーダー経験が欠かせない
給与を「高い/安い」で比べるよりも、「どうすればそこに届くのか」を考える方が、よっぽど前向きで現実的です。
若手のうちに少しずつリーダーの役割を経験しておくこと。
それがキャリアを大きく伸ばす一番の近道だと、僕は思っています。